治療的司法

ある種類の犯罪は、刑罰よりも治療の方が更生・再犯防止に効果的であると言われています。その1つが、依存(症)や嗜癖(アディクション)が背景にある、薬物事件、性犯罪事件、暴行・傷害事件、万引きなどです。

従来の刑事弁護は、刑罰・処分をできるだけ軽くすることや、早期釈放に重点が置かれていました。この従来の方針は、刑罰よりも治療という治療的司法という観点からは、必ずしも望ましいものとはいえません。なぜなら、本人の治療につながる機会やモチベーションを損なうことになりかねないからです。例えば、覚せい剤の所持や使用は、初犯の場合、執行猶予判決になって刑務所に行くことは、まずありません。そのため、弁護人(弁護士)は、初犯の場合は治療につなげなくても、執行猶予判決になるため、本人が望まない限り、治療につなげることはありません。

しかし、依存(症)や嗜癖(アディクション)が背景にある犯罪の場合、できるだけ早期に治療につなぐことが大切です。そうしなければ、多くの場合、再犯に至り、刑務所に行くことになるでしょう。そうならないためにも、ある種の犯罪の場合は、治療的司法の考えにもとづいて、刑事弁護に取り組む必要があります。

専門知識の活用

治療とは具体的にはなんでしょうか。依存(症)や嗜癖(アディクション)の治療法として、科学的に(エビデンスに基づいて)有効であると言われているのが、認知行動療法です。

認知行動療法は心理療法の1つですので、それを理解するためには心理学の専門知識が必要です。しかし、弁護士はあくまでも法律の専門家にすぎませんので、心理学の専門知識はありません。そのため、認知行動療法を理解し、本人にしっかり説明できる弁護士は決して多くありません。

私は大学で心理学を、基礎から体系的に学び、現在も学び続けています。心理学の専門知識を持っている点が多くの弁護士にはない強みです。

受任の制限

刑事弁護でもっとも大切なことはなんでしょうか。それは捕まっている本人と面会(接見)だと考えています。治療的司法のアプローチをとる場合は面会の重要性はさらに高まります。

弁護士は複数の事件(依頼)を常時抱えていて、同時進行で進めるのが一般的です。そのため、本人に会いに警察署や拘置所へ行くことは、たまたま警察署などが近いとか通り道ということがなければ、1日あたり2、3件が精一杯です。週2回は会いに行く計算で考えると、同時進行できる事件数には限りがあります。

そのため、適切な弁護活動を妨げることにならないように、受任数を制限しています。申し訳ありませんが、ご理解いただければと思います。

多様な連絡手段の提供

弁護士(弁護人)に対する不満として、連絡がとれないことをよく耳にします。その理由、事務所の電話番号しか教えてもらえず、事務所に電話しても、不在がちで、折り返しも遅いということにあります。

そのような不満をなくすために、事務所の固定電話番号、弁護士の携帯電話番号・メールアドレス・LINEをお伝えいたします。LINEであれば既読の有無も確認できますので、さらに安心だと思います。

スピード?

刑事事件、刑事弁護の専門サイトには、刑事事件はスピードが大事であることが強調し、すぐに弁護士に相談するように呼びかけています。確かに、犯罪行為を争っている事件や、軽微な事件、早期の釈放が必要な人の場合は、スピードは大事です。

しかし、治療的司法のアプローチの場合、スピードがときには仇になることがあります。例えば、性犯罪や傷害、万引きなどの被害者がいる事件、被害者と示談がまとまると、軽い処分や早期釈放になります。そうなると早くて10日ぐらいで弁護士の仕事は終わります。このように弁護士の関与が短期間で終わった場合、そのあと本人が自発的に治療につながるかというと疑問です。

このように、依存(症)や嗜癖(アディクション)が背景にある犯罪の場合は、必ずしもスピードは大事とはいえません。

元検事は優秀な弁護人なの?

刑事事件・刑事弁護の専門サイトでは、元検事の弁護士がいることを売りにしているところがあります。しかし、元検事が一般的な弁護士(弁護人)よりも優秀といえるかは疑問です。

確かに、元検事であるため刑事事件の経験は、弁護士に比べて多いです。また、検察やら警察の実情も弁護士と比べて詳しいのも確かです。
しかし、検事と弁護士(弁護人)の大きな違いは、警察権力を背景にした強大な捜査権限にあります。元検事は検事を辞めているため、この強大な捜査権限を使えません。そのため、最終的には個々の弁護士(弁護人)の力量によることになります。

そして、強大な捜査権限をもつ検事としての経験と、限られた権限しかもっていない弁護士(弁護人)の経験では異なるため、検事としての経験が弁護士(弁護人)としての力量を保証するとは限りません。

子どものころに家宅捜索を受けた経験

私は、小学生のころ、親が理由で警察の家宅捜索を何度も経験したことがあります。親が不在のときには、近くの消防署の職員の立会のもと、私一人で家宅捜索に対応したこともある。私には、このような経験があるため、警察の捜査に対応しなければならず、驚きと緊張と不安でどうにかなりそうな家族の気持ちを理解できます。このような経験をしたことがある弁護士は稀でしょう。本人と刑事手続に否応なしに巻き込まれた家族の伴走者でありたいです。