性犯罪被害にあうということ

概要

24歳のときに見知らぬ男に強姦された著者が、実名と素顔を公表し、事件とその後のことを記したノンフィクション。
事件のこと、事件当時・事件後の精神・心理状態、家族・彼氏・友人との衝突、自分と同じ性犯罪の被害者や彼女を支援しサポートしてくる人々との出会い、筆者が性犯罪被害者の支援に関与するに至った経緯などが本書で語られている。

感想

性犯罪に加害者側として関与することが多い弁護士として、本書を読んだ感想を書きたいと思います。
私は、強制わいせつや痴漢(迷惑防止条例違反)の被疑者弁護はしたことはあるものの、強姦はまだ関与したことがありません。もっとも、当番弁護士や被疑者国選の名簿に登録しているので、いつかは強姦罪の被疑者の弁護をすることになると思います。本書を通じて被害者の心情や事件が被害者に与える痛みを知りました。このことは性犯罪の刑事弁護のあり方に影響を与えると思います。
例えば、被疑者が強姦を認めていて、示談を望んでいる場合には、被害者と実際にお会いすることになると思います。本書を読んでいたか否かで被害者との接し方に違いがでると思います。
被害者と示談をするには、被疑者・被告人が深く反省していることが大前提になることが多いです。本書を読ますことで被疑者等の内省を深めるきっかけになるかもしれません。そもそも私が本書の存在を知ったのは、とある裁判員裁判のレポートでした。その裁判の弁護人は、本書を被告人に差し入れて読ませたことで、被告人の反省を深めることができたと報告していました。この報告を読んで、本書を読んでみたい、読んでおかなければならないと思いました。他方、私が司法修習生のときに関与した連続強姦事件の被疑者の場合は、本書を読ませてもうまくいかなかったそうです。
被告人が強姦を否認している場合は、弁護人にとって厄介な葛藤が生じることになると思います。なぜなら、被告人が否認している場合、証人として法廷に立つ被害者に反対尋問をしなければならないからです。もっとも、被告人の言い分が信用できて、被害者の供述が信用できないと強く思える場合には、被害者とされる女性への反対尋問に躊躇はないかもしれません。他方、被告人の言い分をどんなに善意解釈したり、検討に検討を重ねても、弁護人の立場からしても不合理・不自然であり信用できないが、被疑者等が否認を貫く場合に、被害者に対し徹底した反対尋問ができるか正直なところ疑問です。そうするのが弁護人の職務であるから躊躇してはいけないのだと思います。でも、躊躇してしまいそうです。
最後に、仮に親しい人が性犯罪の被害に遭った場合についてのことも。私も筆者の周りの人々のようにどのように接すればよいのかわからず悩んでしまうと思います。ただ、筆者は、被害者の気持ちが解らなくても、分かろうとしてほしいと何度も訴えています。なので、被害者の気持ちを分かろうとする努力ができたらと思います。
強姦の被害者が筆者と同じような思いを抱いているかはわかりません。それでも、ある一人の被害者の思いを知ることができてよかったと思います。『性犯罪被害とたたかうこと』も読みます。