はじめに

ご家族が警察に逮捕されて,何が何だかわからず混乱し,また,今後どうなるのか不安であると思います。このような混乱や不安は,刑事手続について何もわからないことが原因のひとつです。刑事手続について少しでも正確な知識を得ることができれば,混乱や不安は少しは軽減されていきます。そこで,ここでは,刑事手続のスタート地点である逮捕について,説明していきます。

逮捕とは?

男性が後ろ手で手錠をかけられている写真

逮捕という言葉は,よく報道で耳にするので馴染みのある言葉だと思います。しかし,必ずしも一般の方が正確に理解しているわけではありません。

逮捕とは,主に警察官が,犯罪をしたと疑われている人(「被疑者」と呼びます)の身体を拘束し,最大72時間,警察署などに捕まえてとどめておくことをいいます。

逮捕の種類

逮捕には,次の3種類あります。

  1. 通常逮捕
  2. 現行犯逮捕
  3. 緊急逮捕

通常逮捕とは?

通常逮捕(刑事訴訟法199条)とは,裁判官が発した逮捕状によって行う逮捕のことです。通常逮捕は,被害者から被害届が出されるなど警察が犯罪が起こった可能性があるとして捜査をすでに開始している場合です。

現行犯逮捕とは?

現行犯逮捕(刑事訴訟法212条)とは,今眼の前で犯罪をしている人や,今目の前で犯罪をし終わった人(合わせて「現行犯」と呼びます)を逮捕することです。

また,次のような人も現行犯とみなします。

  1. 犯人として呼ばれて追いかけられている人
  2. 盗品や犯罪に使った凶器などを持っている人
  3. 身体や服に犯罪の跡が残っている人(返り血など)
  4. 呼び止められて逃げ出した人

現行犯逮捕は,警察官ではない,一般人でもすることができます(刑事訴訟法213条)。

緊急逮捕とは?

緊急逮捕(刑事訴訟法210条)とは,殺人,強制わいせつ,傷害,窃盗,飲酒運転,覚せい剤取締法違反などの重大な犯罪(痴漢や盗撮などは含まれません)について,逮捕状なしで行う逮捕のことです。

例えば,薬物の簡易検査や飲酒検知にひっかかったにもかかわらず,最寄りの交番や警察署への任意同行を拒否した場合に緊急逮捕されることがあります。

逮捕の要件

逮捕は犯罪をしたことが警察に知られると直ちにされるわけではありません。証拠を隠したり壊したり,逃げたりするおそれがなければ逮捕はされません。芸能人が犯罪をしてもみんながみんな逮捕されているわけではありませんよね? その理由は、証拠隠滅や逃亡のおそれがないとして、逮捕されずにすんでいる場合もあります。

逮捕された後

走行中のパトカー逮捕された後は、通常は事件を取り扱う警察署(所轄の警察署)に連行されます。指紋の採取や写真の撮影が行われます(犯罪捜査規範131条1項)。

取り調べ

取り調べ室で警察官による取り調べが行われます。警察官は,逮捕された本人に対して,したと疑われている犯罪事実の内容,黙秘権があることや弁護人を選任できることを伝えます。そのうえで,犯罪をしたのかどうかを確認します。自分がしたことであると認めても,認めなくても,そこで答えた内容は「弁解録取書」と呼ばれる「供述調書」という書類に記録されます。

それから,以下の内容について尋ねられて,その回答は「身上調書」と呼ばれる「供述調書」に記録されます。

  1. 生まれた場所
  2. 勲章,褒賞,年金等の有無
  3. 前科前歴などの有無
  4. 学歴,経歴,収入・資産・借金,家族,生活状態,交友関係
  5. 趣味,喫煙・飲酒・ギャンブルなどの有無,資格の有無
  6. 身長,体重,足のサイズ,視力,血液型,入れ墨の有無などの身体的特徴,健康状態

留置施設

逮捕初日の取り調べが終わったり,夜になったりしたからといって家に帰ることはできません。釈放されるまでは,警察署の留置施設(留置場)に閉じ込められます。

ただし、逮捕された人が女性の場合は、その警察署に女性専用の留置施設がないと、女性専用の留置施設がある警察署に移されます。また、共犯がいる事件の場合、共犯と一緒に同じ警察署の留置施設には入れられないので、それぞれ別の警察署の留置施設に入れられます。この点はご注意ください。

弁護士(私選弁護人)を雇うメリット

弁護士バッジ

本人や家族がお金を払って雇った弁護士のことを私選弁護人と言います。他方、国から報酬が支払われる弁護士のことを国選弁護人と呼びます。

最後に,私選弁護人を雇うメリットについて説明します。なお,デメリットとしては,国選弁護人の場合,原則として本人や家族がお金を支払う必要がないのに対して,私選弁護人の場合は,本人や家族がお金を払う必要がある点です。

勾留阻止の可能性が高まる

逮捕されて勾留(10日から20日間の身柄拘束のことです)されるまでの間に、私選弁護人を雇うメリットは、勾留を阻止できる可能性が高まることです。

裁判官は、警察が集めたり作ったりした本人には不利な証拠と、本人との短時間の会話だけで、勾留をするかどうかを決めます。そのため、どうしても勾留されやすくなります。

しかし、勾留が決まる前に、弁護士を雇えば、本人にとって有利な証拠を用意して、勾留を求める検察官や勾留を決める裁判官に見てもらうことができます。国選弁護人は勾留後につくので、国選弁護人には勾留を阻止することはできません。

逮捕された本人の様子などを知ることができる

また、勾留されるまでは、家族と逮捕された人との面会は許されません。しかし、弁護士であれば、いつでも、何度でも本人と面会することができます。逮捕された人の様子を弁護士を通じて知ることができるだけではなく,犯罪をしたのかどうか,仮にした場合のその理由や動機などもいち早く知ることができます。