先日、私が担当していた刑事事件の被疑者が、不起訴処分になりました。
被疑者は、いわゆる淫行条例違反で逮捕・勾留されました。私は当番弁護士として出動し、被疑者と接見をしたところ、被疑者は青少年と性行為をしていないと否認していました。被疑者は弁護士を雇いたいがお金がないというので、日弁連の被疑者委託援助制度を利用して、無料で受任することになりました(淫行条例違反は国選弁護の対象ではないので、国選弁護人になることはできません)。
被疑者が不起訴処分となった決め手は、アリバイの成立です。つまり、犯行があったとされた日時において、犯行現場と別の場所で、被疑者は友人や上記青少年らと、あるイベントに参加していたので、犯行があったとされる日時・場所において、被疑者が青少年と性行為をすることはできないことが立証されました。
アリバイの立証自体は、私がしました。具体的には、私が関係者から事情聴取をしたうえで、証拠を添えて「アリバイが成立するので、直ちに被疑者を釈放すべきである」という意見書を、担当の検察官に提出しました。
上記意見書は、検察官が処分をするか否かを決める期限の数日前に提出しましたが、捜査機関に対してアリバイがあることはそれより前に主張していました。しかし、捜査機関は、被疑者を自白させようと努力はしていましたが、アリバイの裏付け捜査をしている様子はありませんでした。仮に、私が弁護人として就かなかったら、被疑者は虚偽の自白をしていたか、否認のまま起訴されていたでしょう。実際に被疑者は釈放されるために、何度か虚偽の自白をしそうになったと言っていました。
今回、アリバイを立証できたのは運が良かったとしか言いようがありません。どう言うことかというと、犯行があったとされた日時に、被疑者は恋人との間で、とあるコミュニケーションアプリを使って、チャットをしていました。そのログを「たまたま」その恋人が保存していたので、ログの消失は免れました。被疑者が逮捕・勾留された後に、恋人がそのログのことを思い出し確認するまで、被疑者は犯行日時にどこで何をしていたかまったく思い出せていませんでした(犯行があったとされた日時は半年近く前のことだったので)。そのログには被疑者が犯行日時の前後に「どこで」「誰と」「何をしていたか」が記されていたので、それを手がかりにして、アリバイを証明できる友人から事情を聴き、また、その他の客観的な証拠を収集することができました。仮に、被疑者の恋人がログを保存していなかったら、アリバイを立証することができなかったでしょう。
最近は、自分のすべての行動を記録するというライフログというのが一部の人々の間で流行っているそうです(私もチャレンジしてみましたが三日坊主に終わりました)。ライフログや日記をつけたりするのはなかなか長続きしないと思いますが、アリバイを立証しなければならない事態に陥ったときのために、メール、チャット等のログをしっかり保存し、また、SNSで自分の近況をつぶやいておくことをお勧めします。今回の事件の被疑者のように、いつ何時冤罪で捜査機関に身柄拘束されるかわからないのですから。