はじめに

2018年7月3日(火)19時から,ラフレさいたまで開催された「第4回さいたま依存症治療フォーラム」に参加してきました。このフォーラム自体は4回目ですが,私自身は初参加です。

今回のプログラムには,新しい向精神薬についての情報提供,聖みどり病院の精神科医の講演もありました。しかし,専門的内容過ぎて,弁護士である私にはついていけなかったため,内容の紹介は省略します。

ここでは,こころのホスピタル町田の精神科医で,「よくわかるギャンブル障害」の著者でもある蒲生裕司先生の特別講演「ギャンブル依存症について〜真の回復を考えて〜」の内容の紹介と感想を書きます。

ギャンブル障害について

負の強化

ギャンブル障害の患者は「はじめは楽しかったが,最後には苦しみから逃れるためにギャンブルをしていた」と語るそうです。持っていたお金がギャンブルをすることで,何倍にもなるという嬉しい経験をすると,その後ギャンブルをする機会が増えます。これはオペラント条件付けにおける正の強化にあたります。ギャンブル障害の患者がいう「はじめは楽しかった」というのは,このことです。

しかし,その後は,ギャンブル障害の患者が,自身の抱えている何らかの問題について苦しんでいるときに,ギャンブルをすることで,その苦しみから逃れられるという経験をすると,その苦しみから逃れるためにギャンブルをする機会が増えます。これはオペラント条件付けにおける負の強化にあたります。負の強化は,人が依存症になる理由についての有力な仮説である「自己治療仮説」と同じ考えです。

遅延価値割引

蒲生先生は,このようなメカニズムでギャンブルにハマることが異常な行動といえるのか,そして,ギャンブルにおける正常と異常の境界はどこにあるのか疑問を投げかけていました。蒲生先生は,ギャンブル障害の患者と,そうではない人との違いとして,遅延価値割引の程度を指摘していました。

遅延価値割引とは,短期的な利益と長期的な利益が対立するときに,長期的な利益の価値が下がる傾向にある現象です(蒲生先生が挙げていた例は,短期的な利益が脂こってりのラーメン,長期的な利益が健康的な生活です)。ギャンブル障害の患者は,そうではない人と比べて,遅延価値割引の程度が大きいと蒲生先生は指摘していました。

ギャンブル障害の治療

蒲生先生によると,少なくとも日本においてはギャンブル障害の薬物療法はあまり期待できないそうです。

そして,認知行動療法の有効性は示唆されているけれど,現時点ではその有効性についてさらなる検討が必要ということです。蒲生先生は,ギャンブルをする引き金をなくすことよりも,ギャンブルの代わりになる新しい行動を患者と一緒に個別に検討していく方法を紹介していました。

感想

ギャンブル障害については,当事者団体の講演を聴いたことがあります。しかし,ギャンブル障害の治療を専門に取り組んでいる精神科医のお話を聴いたのは初めてでした。依存や嗜癖に関心があるため勉強になりました。

弁護士をやっていると,薬物依存症の人や,飲酒に問題を抱えている人に出会うことはよくあります。しかし,私は,ギャンブル障害と思わる人と,弁護士の仕事で出会ったことはありませんでした。弁護士業務で出会う可能性があるとしたら,債務整理の依頼者がギャンブル障害というケースだと思います。ギャンブルによる借金は免責不許可(借金がチャラにならないこと)になり得ます。弁護士としては,それを回避するために,依頼者に専門医への受診や自助グループへの参加を働きかけることになるのであろうと思いました。