はじめに

覚醒剤の使用・所持で逮捕される場合,初めて使用したときに警察に捕まるということはほとんどありません。何度も使用したあとに,何らかのきっかけ(職務質問,第三者の通報など)で逮捕されることがほとんどだと思います。つまり,覚醒剤の使用・所持で初めて逮捕されたとしても,その時点では覚醒剤の依存症になっている可能性が高いです。

覚醒剤の依存症は,やめたくてもやめられないというコントロールを失っている状態です。そのため,警察の留置施設(留置場)に数か月いて強制的に断薬しただけでは,適切な治療がなされていないので,覚醒剤の依存症であることに変わりがありません。したがって,覚醒剤の使用・所持で再び逮捕される可能性は依然として高いままです。

そこで,覚せい剤取締法違反で捕まった人の再犯の可能性がどの程度であるかを,統計データからみていきたいと思います。

同一罪名再犯者率

2017年の犯罪白書によると,2016年に覚せい剤取締法違反で警察が検挙した成人について,以前も覚せい剤取締法違反で検挙されていた割合は65.8%です。近年上昇しています(図1)。

出典 2017年犯罪白書

執行猶予の取消率

覚醒剤事件の判決の傾向」でも説明しましたように,覚醒剤の使用・所持の初犯の場合,懲役1年6か月執行猶予3年の判決になることがほとんどです。やや古いデータですが,2008年の犯罪白書によると,覚せい剤取締法違反で執行猶予が取り消された割合は24.2%です。つまり,4人に1人が執行猶予を取り消されて刑務所に入っています。この数字からは執行猶予がなぜ取り消されたのかは明らかではありません。しかし,おそらくその多くは再び覚醒剤の使用・所持で捕まったと考えて間違いないでしょう。

出所受刑者の再入率

刑務所などの刑事施設を仮釈放か満期釈放になった人を「出所受刑者」と呼びます。この出所受刑者が出所後に犯罪をして,再び受刑のために刑務所に入る割合のことを「再入率」と呼びます。

出典 2016年犯罪白書

次の図2のとおり,2011年に出所した出所受刑者のうち,5年以内の前と同じ罪による再入率は23.4%です。そのうち,覚せい剤取締法違反は39.3%と全体より大きく上回っています。つまり,覚せい剤取締法違反で実刑判決を受けた人の約10人に4人が再び覚せい剤取締法違反で実刑判決を受けていることになります。

以上のように,覚せい剤取締法で捕まった人が再び同じ犯罪で捕まる割合は非常に高いといわざるを得ません。警察に捕まって刑事裁判を受けたとしても,刑務所に入ったとしても,覚醒剤の依存から回復して断薬することが簡単ではないことがわかったと思います。この統計データからも覚醒剤の依存症の治療が必要であることがわかります。