はじめに

裁判所の看板覚醒剤を使用したり所持したりして、そのことで逮捕されると、多くの場合が、正式な刑事裁判を受けなければなりません。では、裁判所が下す判決はどのような内容になるでしょうか? ここでは、一般的な覚醒剤の使用・所持の場合に、どのような刑罰が課せられるかについて説明します。

覚せい剤取締法の定め(法定刑)

覚せい剤取締法は、次で示すように、覚醒剤を所持したり、使用したりすることを禁止しています。これに反した場合には刑罰を課せられます。所持も使用も10年以下の懲役です。

第42条の2 覚せい剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(中略)は、10年以下の懲役に処する。

(後略)

第41条の3 次の各号の一に該当する者は、10年以下の懲役に処する。
1 第19条(使用の禁止)の規定に違反した者
(後略)

覚醒剤の所持と使用のどちらか一方であれば最大で懲役10年です。所持と使用の両方であれば1.5倍されるので最大で懲役15年となります。

実際に言い渡される刑

初犯の場合

売人からの覚醒剤の購入量は0.2g〜1g程度、使用量は0.03g程度です。この程度の使用、使用目的のための所持を前提に、ここから説明します。

この場合、覚醒剤の使用や所持の前科がないと、懲役1年6か月執行猶予3年(保護観察なし)という判決になることがほとんどです。

再犯の場合

刑務所の壁執行猶予期間中に、再び覚醒剤の使用・所持が捕まると、ほぼ9割9分再度の執行猶予がつくことはなく、実刑判決が出ます。つまり、刑務所に行くことになります。

初犯の執行猶予期間中に、再犯の判決が下されるときは、懲役1年6か月以下の実刑判決になります。

初犯のときには1年6か月なのに、再犯のときにはなぜそれ以下になるのか疑問に思う人もいるかもしれません。その理由は、初犯の執行猶予期間中に、再犯の実刑判決が確定すると、初犯の執行猶予が取り消されて、初犯の懲役1年6か月と再犯の懲役の両方の期間刑務所に行かなければなりません。裁判所はこのことを考慮して再犯の懲役の長さを初犯より短くしています。

執行猶予期間がそろそろ終わりそうな時期に、覚醒剤の使用・所持で捕まった場合、再犯の実刑判決が確定する前に、執行猶予期間が終わることがあります(いわゆる「弁当切り」)。この場合は、初犯の執行猶予は取り消されませんので、刑務所に行くのは再犯の懲役刑の期間だけです。執行猶予が取り消されない場合の再犯の判決は、懲役1年4か月から1年8か月です。

初犯から10年以上経過した再犯の場合は、初犯と同じように執行猶予付き判決になることもあります。

三犯の場合

覚醒剤の使用・所持で捕まるのが3回目となると、懲役刑の期間は1年8か月から2年です。4犯以降は2年から3年となります。

刑の一部執行猶予について

ここでは、刑の一部執行猶予については触れていません。覚醒剤事件と刑の一部執行猶予については、改めて説明をします。

参考文献

難波宏「大阪刑事実務研究会 量刑に関する諸問題10 前科、前歴等と量刑」(判タ1238号28頁)