はじめに

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覚醒剤の依存になっている人の多くは、警察に捕まり刑務所に入っても覚醒剤の依存から回復することはできません。回復のためには、DARCやNAなどの自助グループや、依存症専門の医者の治療を受けることが不可欠です。覚醒剤で警察に捕まっているときが、自助グループや専門医につながる絶好のチャンスです。

しかし、自助グループや専門医につながる前提として、警察署の留置場などから釈放されなければなりません。そのための方法が保釈です。そこで、保釈について弁護士がわかりやすく説明します。

保釈とは?

そもそも保釈とは、保釈保証金を支払うことを条件に、勾留中の被告人を釈放することです。

この保釈の意味から読み取れる重要なことは、2つです。1つ目は保釈保証金を支払う必要があること、二つ目は被告人であることです。保釈保証金については後ほど説明するとして、被告人であることが意味することをここで説明します。

覚醒剤の使用などで警察に逮捕された場合、一般的に、23日間以内に起訴されます。起訴されることで、正式な裁判を受けなければなりません。起訴される前は逮捕された人は被疑者、起訴された後は被告人と呼ばれます。

したがって、起訴されるまでは保釈されることはありません。別の言い方をすると、逮捕されてから最大で23日間は警察の留置場などから出られないことになります。

なお、覚醒剤の使用が証拠上明らかな場合は、起訴される前の最大23日間以内に、釈放されることは一般的にありません。被疑者段階での釈放については、別の機会に説明します。

保釈の手続・流れ

保釈を求める場合には、裁判所に対して保釈の請求をすることになります。被告人がすることもできますが、一般的には弁護人が書面によって保釈の請求をします。

裁判所や裁判官は、検察官の意見も参考に、保釈を認めるかどうかを判断します。平日であれば保釈を請求した日かその翌日ぐらいには保釈の判断がなされます。

保釈が許可された場合には、その日に保釈保証金の支払いができれば、その日に釈放されます。

保釈の要件

すでに説明したように、保釈が認められるには、起訴後でなければなりません。その他に保釈の要件があります。その中でも重要な2つの要件が、被告人に証拠隠滅のおそれがないこと、被告人に逃亡のおそれがないことです。

覚醒剤を一人で所持・使用していた場合には、起訴された段階で、警察や検察の捜査はほぼ終了しています。そのため、一般人である被告人が証拠を隠滅することはほぼ不可能です。したがって、被告人に証拠隠滅のおそれは一般的にはありません。

他方、覚醒剤を一人暮らしの自宅で所持・使用していた場合、被告人が逃げるつもりがないと言っても、保釈を許可する裁判官は容易に信じてくれません。

裁判官に信じてもらうために、身柄引受人を用意することが一般的です。この身柄引受人には、配偶者や家族がなることが多いです。天涯孤独な人や協力してくれる家族がいない場合には、DARCへの入所や精神科病院への入院が決まっていれば、DARCの施設長や、入院先の医師が身柄引受人になってくれることもあります。

保釈保証金の相場

覚醒剤の所持や自己使用で捕まっている場合の保釈保証金の相場は、150万円から200万円です。

決して安くない金額です。預貯金として持っていなければ、すぐには用意できない金額だと思います。したがって、保釈保証金を被告人やその家族が用意できないことも少なくないでしょう。そのような場合、全弁協(全国弁護士協同組合連合会)や日本保釈支援協会の保釈支援事業を利用することで、保釈保証金の問題はクリアできますのでご安心ください。この保釈支援事業については、別の機会に説明したいと思います。

保釈の認められやすさ

以上のように、保釈が認められる要件について説明してきました。では、保釈はどのような場合に認められるでしょうか? 私の経験からすると、執行猶予付きの判決が出そうなケースであれば、多くの場合認められます。

逆に、実刑判決が出そうなケースでは、保釈のハードルが高まります。保釈が認められるかは、判断をする裁判官や弁護人の腕次第というところでしょうか。

私が担当し、実刑がほぼ確実視されている事件で、裁判中に裁判官が私の依頼者である被告人に対して、「保釈を希望しているかもしれないが、保釈は認めないよ!」と宣言していました。案の定、その裁判官は保釈を認めませんでした。もっとも、東京高裁に不服申立をして、保釈を認めてもらいました。

保釈後の入所・入院

保釈が認められた後は、自宅に一度帰らずに、精神科病院やDARCに行き、その日に入院や入所するというのがベストです。なぜなら、一度帰宅すると、入院や入所に対するモチベーションが下がる心配があるからです。もっとも、入所や入院が決まっているときは、保釈中の住所として、DARCや病院が指定されているので、行きたくなくとも行かざるを得ませんが。

協力してくれる家族がいる場合は、本人と家族でDARCなどに行ってもらうことはあると思います。しかし、私はその場合でも、DARCなどには弁護人も付き添うことが望ましいと私は考えます。弁護人としては依頼者がお世話になる施設などにはちゃんと挨拶して、最低限の信頼関係は築いておくべきだと考えるからです。

私は、一度、さいたま拘置支所に被告人を車で迎えに行き、そのまま千葉の精神科病院に連れて行ったことがあります。

なお、協力してくれる家族の有無にかかわらず、被告人一人でDARCなどに行ってもらうということは考えられません。

保釈の注意点

覚醒剤事件における保釈で、もっとも注意しなければならないことは、保釈中の覚醒剤の再使用です。覚醒剤を再使用して、それが発覚すると、まず間違いなく実刑になりますし、刑の期間も通常よりも長くなります。また、保釈保証金も全部または一部は戻ってこないでしょう。

私が関わったケースでは、被告人が保釈後すぐに覚醒剤を再使用し、覚醒剤の中毒症状で幻覚が発生して、それを怖がった被告人が警察に自ら通報して、覚醒剤の再使用が発覚したというものがあります。

被告人が保釈を望んでいる場合、弁護人としては保釈請求を拒否することはできません。しかし、DARCや精神科病院に行く意思が被告人にない場合は、保釈中の覚醒剤の再使用のリスクがあるので、弁護人として保釈請求をすることにためらいを感じます。